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矯正歯科

2026-08-15

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叢生(歯のガタガタ)・八重歯はなぜ起こる?治療の選択肢を解説

歯並び 叢生 イメージ

叢生と八重歯の原因を、日本人の疫学データと研究で解説。スペースをつくる4つの方法(抜歯・IPR・拡大・遠心移動)で実際に何ミリ得られるのかをお伝えします。

※写真はイメージです

歯が重なってガタガタに並んでいる状態を、歯科では叢生(そうせい)と呼びます。日本では犬歯が外側に飛び出した「八重歯」も多く見られ、かわいらしさの象徴とされることもあれば、清掃性の問題として語られることもあります。

この記事では、東京銀座NOVA矯正歯科が、叢生がなぜ起こるのか、日本人のデータでどれくらい見られるのか、そしてスペースをつくる4つの方法(抜歯・IPR・拡大・遠心移動)で実際に何ミリ得られるのかを、疫学調査とシステマティックレビューの数値で解説します。治療方針の決定には歯科医師の診断が必要で、効果には個人差があります。

叢生とは — 「歯の大きさ」と「あごの大きさ」の不一致

叢生とは、歯が並ぶために必要なスペースが、実際の歯列弓の長さより不足している状態です。専門的には「アーチレングスディスクレパンシー(歯列弓長不足)」と表現します。

原因はシンプルで、歯が大きいか、あごが小さいか、あるいはその両方です。システマティックレビューでも「小さい歯列弓と大きい歯」の組み合わせが一貫して叢生と関連することが示されています[1]

興味深いのは、日本人のあごが世代を追って小さくなっている可能性を示すデータです。乳歯列を40年隔てて比較した研究(n=61 vs 93)では、歯冠のサイズは変わっていないのに、歯列弓は男児で有意に減少していました(p<0.01)。歯の大きさと歯列弓長の差も男児で有意に減少しており、著者らは「日本人小児の叢生リスクが高まっている」と考察しています[2]

また、永久歯の生え変わる順序も関係します。上顎で「犬歯→第二小臼歯」、下顎で「犬歯→第一小臼歯」という順序をたどると、叢生を生じやすいと報告されています[3]

重症度をどう測るか(Little’s Irregularity Index)

「ガタガタ」の程度は、感覚ではなく数値で評価されます。最も広く使われるのがLittle’s Irregularity Index(LII)で、下顎前歯6歯の隣接する接触点のズレ5か所を合計したミリ数です[4]

LII の値重症度
0完全な排列
1〜3mm軽度
4〜6mm中等度
7〜9mm重度
10mm以上きわめて重度

成人302名を対象とした研究では、実際の治療方針がLII 3mm未満で拡大、3〜5mmでIPR(歯間エナメル質削合)、5mm超で下顎切歯1歯の抜去という形で分岐していました[5]。ミリ単位の測定が、治療の選択肢そのものを決めているわけです。

日本人のデータ — 12〜20歳の約26%

国の調査としては、厚生労働省の平成28年歯科疾患実態調査が叢生の項目を含んでいます。12〜20歳の結果は次のとおりです[6]

  • 叢生なし:73.6% → 叢生あり:約26%
  • 内訳:上顎のみ8.5%/下顎のみ6.6%/上下顎とも11.3%
  • 空隙(すきま)あり:約10%

ただし重要な注意があります。この調査の対象は12〜20歳の合計106名のみであり、「日本人の4人に1人が叢生」と一般化するのは統計的に適切ではありません。また令和4年・令和6年の調査には叢生の項目自体が存在しないため、国の統計として引用できる最新値は2016年のものになります。

なぜ八重歯になるのか

八重歯とは、上顎犬歯が歯列の外側(唇側)の高い位置に生えた状態です。同じ「犬歯が正しい位置に生えない」現象でも、口蓋側(内側)に入り込む場合と唇側(外側)に出る場合とでは、まったく別の病態とされています。

埋伏犬歯における口蓋側と唇側の比率はおよそ8対1で口蓋側が多いのですが、口蓋側転位のケースでは85%・82%で歯列弓長は足りていた——つまり叢生が主因ではありませんでした。これに対し唇側転位(=八重歯側)は叢生と結びついていることが示されています[7]

さらに、唇側転位の患者さんは第一小臼歯間の幅径が小さく、歯列弓が狭く、口蓋が高いという形態的な特徴を持つことが報告されています[8]

犬歯は永久歯の中でも遅れて生えてくる歯です。先に他の歯が並んでスペースを使い切ってしまうと、最後に出てくる犬歯が行き場を失って外に出る——これが八重歯の基本的な成り立ちです。

むし歯・歯周病との関係 — 因果は証明されていない

「歯並びが悪いとむし歯になりやすい」という説明はよく聞かれますが、研究の実際はもう少し慎重です

叢生と歯肉炎の関連を調べたメタアナリシスでは、オッズ比1.66(95%信頼区間 1.27〜2.16、I²=0%)という関連が示され、「4mmを超える叢生では口腔清掃不良が99%高い」とも報告されました。ただしGRADEによる確実性はVery lowで、著者自身が「因果関係は推論できない」と原文に明記しています。プラーク指標については研究間のばらつきが大きすぎて(I²=92%)統合できませんでした[9]

むし歯との関係はさらに一貫していません。8研究のうち関連なし4件、負の相関2件、正の関連1件、部位によって逆転1件と結果が割れており、「関連を決着させる高品質な研究は存在しない」とされています[10]

正確に言えば、「叢生があると磨きにくい部位が生まれる」ことは事実として説明できますが、「叢生があるから必ずむし歯になる」という因果は証明されていません。脅すような説明は、エビデンスに照らして適切ではないと考えます。

スペースをつくる4つの方法と、得られる量

叢生の治療は、突き詰めれば「足りないスペースをどう捻出するか」です。方法は大きく4つあります。

① IPR(歯間エナメル質削合)

歯と歯の間のエナメル質をごくわずかに削る方法です。隣接面のエナメル質厚は近心0.96〜1.29mm、遠心0.98〜1.25mmで、1部位あたり0.20mmを超えて削ると中〜高リスク部位が有意に増加します。残存0.5mmを確保する条件での総獲得量は上顎11.96mm/下顎11.32mmと算出されています[11]

ただし計画どおりには削れていません。計画値 上顎1.09±1.13mm/下顎1.43±1.10mm に対し、実測は0.55±0.64mm/0.82±0.84mm で、達成率は44.95%/37.02%でした[12]。安全性については、脱灰・う蝕増加・歯周変化・知覚過敏のいずれも認められなかったと報告されていますが、研究の質は低い〜非常に低いと評価されています[13]

② 拡大(歯列弓を横に広げる)

数学モデルによる解析では、切歯を前方に動かすほうが、臼歯部を拡大するより約4倍効率よく歯列弓周長を増やすとされています[14]。また、歯列弓幅径の変化が前歯の排列に必要なスペースに与える影響は、拡大1mmあたり上顎0.03mm/下顎0.04mmと「臨床的に無視できる」水準でした[15]「広げれば並ぶ」は思うほど単純ではないということです。

③ 遠心移動(奥歯を後ろに動かす)

アンカースクリューを用いた場合、上顎大臼歯の遠心移動量は3.3〜6.4mm、平均移動速度は0.7±0.3mm/月と、日本矯正歯科学会のガイドラインに整理されています[16]

④ 抜歯

抜歯を選択した症例の叢生量は、第一小臼歯4本抜去群で上顎7.3mm/下顎7.4mm、第二小臼歯群で6.6mm/6.5mm、非抜歯群で6.0mm/5.9mmと報告されています[17]叢生の量が大きいほど抜歯が選ばれているという実態が読み取れます。

なお「親知らずを抜けば叢生が改善する」という説については、Cochraneレビューが智歯抜去による叢生軽減効果を認めていません(平均差 −0.30mm、95%信頼区間 −1.30〜0.70)[18]

マウスピース矯正で叢生は治るのか

症例によります。ここで押さえるべきは、八重歯の治療で必要になる「犬歯の回転」が、マウスピース型矯正装置にとって最も苦手な動きのひとつだという点です。

基準論文とされるKravitz 2009(37例・前歯401歯)では、全体の平均正確度41%に対し、犬歯の回転は他の歯種より有意に低く、特に上顎犬歯は15°を超えると有意に低下しました[19]。2025年の回転に関するシステマティックレビューでも、正確度は全体で36〜85%(平均約65%)に対し、犬歯は36〜58%(上顎犬歯で約50%)と最低でした[20]

マウスピース矯正が八重歯に使えないという意味ではありませんが、「途中で追加のマウスピースが必要になりやすい領域」であることは、あらかじめ知っておくと納得感が違います。

八重歯を「治す/残す」をどう考えるか

八重歯を魅力として捉える文化的な評価が日本にあることは、学術的にも関心が持たれているテーマです(Inoue らによる研究が存在します)。ただし日米比較の具体的な数値は原著を確認できなかったため、本記事では扱いません

機能・清掃性の観点から言えるのは、次の3点です。

  • 外側に飛び出した犬歯は唇や頬の粘膜に当たりやすく、刺激の原因になることがある
  • 重なった部分は歯ブラシの毛先が届きにくい面が生まれる。ただし前述のとおり、これが必ずむし歯につながるという因果は証明されていない
  • 犬歯は噛み合わせの誘導で重要な役割を担う歯であり、位置が大きくずれると他の歯に負担がかかることがある

「治すべきかどうか」は、見た目の好み・機能・清掃性・ご本人の希望を合わせて考えるべき問題です。審美的な理由だけで治療を勧めることも、逆に機能を理由に不安をあおることも適切ではないと考えます。まずは現状を正確に把握することから始めていただければと思います。

よくあるご質問

Q. 叢生(歯のガタガタ)とは何ですか?

A. 歯が並ぶために必要なスペースが、実際の歯列弓の長さより不足している状態です。歯が大きい、あごが小さい、あるいはその両方が原因となります。重症度はLittle’s Irregularity Indexという指標で数値化され、1〜3mmが軽度、4〜6mmが中等度、7〜9mmが重度とされます。

Q. 日本人にはどれくらい叢生が見られますか?

A. 厚生労働省の平成28年歯科疾患実態調査では、12〜20歳で叢生ありが約26%(上顎のみ8.5%、下顎のみ6.6%、上下顎とも11.3%)でした。ただし対象は106名と小規模で、日本人全体に一般化するのは適切ではありません。なお令和4年・令和6年の調査には叢生の項目がありません。

Q. なぜ八重歯になるのですか?

A. 犬歯は永久歯の中で遅く生えてくるため、先に他の歯がスペースを使い切ってしまうと行き場を失い、外側の高い位置に出てくることがあります。研究では、外側に転位した犬歯は叢生と結びついており、第一小臼歯間の幅径が小さく歯列弓が狭い、口蓋が高いといった形態的特徴が報告されています。

Q. 歯並びが悪いとむし歯になりやすいのでしょうか?

A. 叢生と歯肉炎の関連はオッズ比1.66と報告されていますが、エビデンスの確実性はVery lowで、著者自身が「因果関係は推論できない」と明記しています。むし歯については8研究で結果が割れており、決着していません。磨きにくい部位が生まれることは事実ですが、必ずむし歯になるという因果は証明されていないというのが正確な理解です。

Q. 歯を抜かずに治せますか?

A. 叢生の量によります。スペースをつくる方法にはIPR(歯間エナメル質削合)、拡大、奥歯の遠心移動、抜歯があり、それぞれ得られる量が異なります。研究では、抜歯を選択した症例の叢生量は非抜歯症例より大きい傾向が示されています。適応の判断には精密検査に基づく歯科医師の診断が必要です。

Q. 親知らずを抜けば歯のガタガタは改善しますか?

A. Cochraneレビューでは、親知らずの抜去による叢生の軽減効果は認められていません(平均差 −0.30mm、95%信頼区間 −1.30〜0.70)。親知らずの抜歯には別の適応理由がありますので、担当医にご相談ください。

Q. マウスピース矯正で八重歯は治せますか?

A. 症例によります。八重歯の改善に必要な犬歯の回転は、マウスピース型矯正装置が最も苦手とする動きのひとつで、研究では犬歯の回転精度は36〜58%(上顎犬歯で約50%)と報告されています。追加のマウスピース製作が必要になりやすい領域です。適応の可否は診断によります。

参考文献

  1. Contreras-Madrid AI, et al. Front Oral Health. 2026;7:1784622. doi:10.3389/froh.2026.1784622
  2. Makiguchi T, et al. Bull Tokyo Dent Coll. 2018;59(3):171–181. doi:10.2209/tdcpublication.2017-0033
  3. García-Gil M, et al. Children. 2023;10:674. PMC10137228
  4. Little RM. The Irregularity Index. Am J Orthod. 1975;68(5):554–563. doi:10.1016/0002-9416(75)90086-x
  5. Antoszewska-Smith J, et al. Int J Dent. 2017;2017:5057941. PMC5317118
  6. 厚生労働省「平成28年歯科疾患実態調査結果の概要」表23・表25. 厚生労働省
  7. Litsas G, Acar A. Open Dent J. 2011;5:39–47. PMC3091288
  8. Choi Y, et al. J Clin Pediatr Dent. 2023;47:138–144. doi:10.22514/jocpd.2023.063
  9. Szyszka-Sommerfeld L, et al. J Clin Med. 2026;15(3):1155. PMC12898605
  10. Hafez HS, et al. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2012;142(4):443–450. doi:10.1016/j.ajodo.2012.04.018
  11. González-García E, et al. Clin Exp Dent Res. 2025. PMC11832591
  12. De Felice ME, et al. Prog Orthod. 2020;21:28. PMC7385051
  13. Gómez-Aguirre JN, et al. Orthod Craniofac Res. 2022;25(3):304–319. doi:10.1111/ocr.12555
  14. Germane N, et al. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 1991;100(5):421–427. doi:10.1016/0889-5406(91)70081-7
  15. Elkholy F, et al. Clin Oral Investig. 2025. PMC12075255
  16. 公益社団法人日本矯正歯科学会「歯科矯正用アンカースクリューガイドライン 第二版」. 日本矯正歯科学会
  17. Burashed H. Cureus. 2023. PMC10174334
  18. Turner S, et al. Orthodontic treatment for crowded teeth in children. Cochrane Database Syst Rev. 2021;(12):CD003453. PMC8786262
  19. Kravitz ND, et al. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2009;135:27–35. doi:10.1016/j.ajodo.2007.05.018
  20. Benedetti G, et al. Dent J. 2025;13(10):440. PMC12564582

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