矯正歯科

2026-08-21

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矯正歯科の認定医・専門医とは?制度の実際を公式資料で解説

矯正歯科の診療室 イメージ

矯正歯科の認定医・専門医・臨床医の違いを、学会と厚生労働省の公式資料で整理。2024年9月の制度変更と、患者さん自身で確認する方法までお伝えします。

※写真はイメージです

矯正歯科を探すとき、「認定医」「専門医」「指導医」といった肩書きを目にします。似た言葉が並んでいて、何がどう違うのか分かりにくいと感じる方が多いはずです。

この記事では、東京銀座NOVA矯正歯科が、これらの資格を学会と厚生労働省の公式資料の原文に基づいて整理します。実は2024年9月に制度が大きく変わっており、ネット上の解説の多くが古い情報のままです。あわせて、患者さんご自身で資格を確認する方法と、「資格があれば治療がうまいのか」という問いへの誠実な答えもお伝えします。

結論から — 5つの資格が併存しています

公益社団法人日本矯正歯科学会(JOS)の公式ページには「2026年8月現在」として、次の5つの資格が掲載されています[1]

資格名認定するのは誰か主な要件
矯正歯科認定医日本矯正歯科学会歯科医師免許取得後5年以上の正会員、認定研修施設での臨床研修5年以上、筆頭論文1編、症例審査。5年ごと更新[2]
矯正歯科専門医日本歯科専門医機構認定医資格に加え、常勤5年以上・合計150症例以上の臨床研修、筆記試験と5課題症例の審査。5年ごと更新[3]
研修指導医日本矯正歯科学会専門医であること、12年以上の正会員、学術活動50単位以上、保険の施設基準を届け出た医療機関に常勤[3]
臨床医(旧・臨床指導医)日本矯正歯科学会認定医資格に加え、学術活動と症例審査
指導医(2028年廃止予定)日本矯正歯科学会12年以上専従、3年以上の教育歴。役割は研修指導医へ移行

ポイントは「専門医」だけ認定している組織が違うことです。専門医は学会ではなく日本歯科専門医機構という第三者機関が認定しています。ここが後述する広告ルールの分かれ目になります。

「専門医」の名称が二段階で変わった経緯

ネット上の解説が食い違っているのは、ここ数年で名称が二度変わったためです。

日本矯正歯科学会の公式ページには、次のように明記されています[1]

日本矯正歯科学会の「専門医」の名称が、「臨床指導医」へ変更されました
なお、従前の日本矯正歯科学会「専門医」は「臨床指導医」へと名称が変更されております。

そして現在の一覧では、さらに「臨床医(旧臨床指導医)」と表記されています。整理すると次の流れです。

学会の「専門医」 → 「臨床指導医」 → 「臨床医」

つまり「専門医」という名称は、日本歯科専門医機構が認定するものに一本化されたわけです。「昔この先生は専門医だったのに、今は臨床医と書いてある」という場合、資格を失ったのではなく名称が変わっただけという可能性があります。

それぞれ何人いるのか

日本矯正歯科学会の名簿検索と日本歯科専門医機構の公表資料から、実数を確認しました。

資格人数
日本矯正歯科学会 正会員7,051名(2024年2月29日現在)[4]
認定医3,384名
専門医(機構認定)297名
研修指導医150名

日本歯科専門医機構の年度別名簿でも、2023年度198名・2024年度32名・2025年度68名の合計298名と、ほぼ一致します[5]

数字で見ると、専門医は認定医の1割弱、学会の正会員全体の約4%にあたります。制度が始まって日が浅いことも、人数が少ない理由のひとつです。

【重要】広告できる資格は1つだけ

ここが本記事で最もお伝えしたい点です。

医院のウェブサイトや看板に掲げてよい(=医療広告として認められる)矯正の専門性資格は、日本歯科専門医機構が認定する「矯正歯科専門医」だけです。学会が認定する認定医・臨床医・臨床指導医・指導医・研修指導医は、いずれも広告可能な専門性資格には含まれていません

根拠は厚生労働省が公表している、広告可能な専門性資格のリストです。歯科医師については5団体5資格のみが認められています[6]

  • 日本口腔外科学会 → 口腔外科専門医
  • 日本歯周病学会 → 歯周病専門医
  • 日本歯科麻酔学会 → 歯科麻酔専門医
  • 日本小児歯科学会 → 小児歯科専門医
  • 日本歯科放射線学会 → 歯科放射線専門医

このリストに日本矯正歯科学会は入っていません。学会の認定医は「取得していない」わけではなく、「取得していても広告には使えない」という位置づけです。

表記のルール

医療広告ガイドラインは、表記の仕方まで細かく定めています[7]

表記扱い
「厚生労働省認定 ○○専門医」虚偽広告
単に「○○専門医」(認定団体名なし)誇大広告
「○○学会認定医」(活動実態のない団体の認定)誇大広告
「歯科医師○○○○(日本歯科専門医機構認定○○専門歯科医)」適切(認定団体を明記)

さらに、略歴の中に資格取得を書くこともできません。ガイドラインは「記載する事項は……専門医や認定医等の資格の取得等は含まれない」と定めています。医院のドクター紹介ページで「○年 認定医取得」といった記載を見かけることがありますが、これはガイドラインの想定外の書き方です。

また、機構認定の専門医と同じ診療領域について学会認定を併記することもできません

矯正歯科が広告可能になったのは2024年9月から

「では以前から専門医は広告できていたのでは」と思われるかもしれませんが、そうではありません。

厚生労働省の新旧対照表を見ると、変更点が明確です[8]

  • 改正前:口腔外科、歯周病、歯科麻酔、小児歯科、歯科放射線及び補綴歯科
  • 改正後:口腔外科、歯周病、歯科麻酔、小児歯科、歯科放射線、補綴歯科、矯正歯科及び歯科保存

この改正は2024年9月13日付(医政発0913第4号)です。つまりそれ以前、矯正歯科には広告可能な専門医資格が存在しませんでした。制度の経緯は査読論文にもまとめられており、2024年6月20日に機構理事会が承認し、9月13日の厚労省通知で広告可能になったという流れです[9]

ネット上の「矯正に広告できる専門医資格はない」という解説は、2024年9月以前には正しかった情報です。情報の日付を確認することが大切です。

患者さんが自分で確認する方法

肩書きは、公式の名簿で誰でも確認できます。

調べたいこと確認先
認定医・専門医・研修指導医(都道府県や氏名で検索可)日本矯正歯科学会 名簿検索
機構認定の専門医(年度別の名簿PDF)日本歯科専門医機構
保険適用の矯正ができる医療機関(「矯診」「顎診」)地方厚生(支)局の「施設基準届出受理医療機関名簿」

いずれも公的な一次情報です。医院サイトの表示だけで判断せず、名簿で裏を取ることをおすすめします。

「資格があれば治療がうまい」と言えるのか

正直にお答えします。資格は「一定の研修と審査を経た」ことの担保であって、個々の治療結果を保証するものではありません。制度の文書そのものが、そう読める作りになっています。

① 審査の対象は「申請者が選んで提出した症例」

認定医は症例審査、専門医は5課題症例と筆記試験で判定されます[10]日常診療の全症例の成績を測る仕組みではありません。

② 筆記試験は臨床技能を測るものではない

専門医制度施行細則が定める試験範囲は、「医療法をはじめとする法令、他の分野との連携……感染対策、医療安全に係る基本事項、ホームページを含む倫理的配慮、最新の矯正歯科用機器に対する安全性」です[10]。歯を動かす腕前を問う試験ではありません。

③ 制度が掲げているのは「標準的な」能力

認定医制度規則第4条は、「標準的な矯正歯科治療を提供する能力」と規定しています[2]。卓越性ではなく、標準性の担保だと制度自身が述べているわけです。

④ 実際に術者間の差は測定されている

868名を対象とした歯根吸収の研究では、医院間の差が大きく、最も多い医院は最も少ない医院より前歯1本あたり平均でほぼ1mm多かったと報告されています[11]。資格の有無とは別の軸で、差は確かに存在します。

ですから「認定医だから安心」「専門医だから失敗しない」という説明は、制度の建付けからしても適切ではありません。資格は出発点として確認する価値のある情報ですが、それだけで決められるものではない、というのが誠実な言い方だと考えます。

資格以外に確認するとよいこと

日本矯正歯科学会自身が、2026年3月に会員向けの注意喚起を出しています。その文書には「本学会の学会員に対し消費者庁による措置命令が発令されるに至った事案も生じております」と書かれています[12]

実際、2025年3月には歯列矯正に関して、星5つのレビュー投稿を条件に金券の提供や治療費の割引を伝えていた行為が景品表示法違反(ステルスマーケティング告示)にあたるとして、措置命令が出ています[13]

口コミは、必ずしも自然発生したものとは限りません。星の数だけで判断せず、次のような点をあわせて確認されることをおすすめします。

  • 治療計画を書面で受け取れるか(診断名、抜歯の要否とその理由、期間の見込み、総額と追加費用の条件)
  • リスクと副作用の説明があるか(歯根吸収、歯肉退縮、後戻り、脱灰など)
  • 保定(リテーナー)の方法・期間・費用が総額に含まれるか
  • 転院や中途解約になった場合の取り扱いが契約書に明記されているか
  • 質問に対して、できないこと・分からないことも含めて答えてくれるか

資格は入口の情報にすぎません。実際に話してみて、納得のいく説明が返ってくるかどうかのほうが、長い付き合いになる矯正治療では重要だと考えています。

よくあるご質問

Q. 矯正歯科の「認定医」と「専門医」は何が違いますか?

A. 認定するのが別の組織です。認定医は日本矯正歯科学会が認定し、歯科医師免許取得後5年以上の正会員であることや認定研修施設での臨床研修5年以上、筆頭論文1編、症例審査などが要件です。専門医は日本歯科専門医機構という第三者機関が認定し、認定医資格に加えて常勤5年以上・合計150症例以上の臨床研修、筆記試験と5課題症例の審査が必要です。

Q. 「臨床指導医」「臨床医」という肩書きを見ましたが、専門医とは違うのですか?

A. もともと日本矯正歯科学会が認定していた「専門医」の名称が「臨床指導医」に変更され、現在の学会一覧ではさらに「臨床医(旧臨床指導医)」と表記されています。資格を失ったのではなく名称が変わったものです。現在「専門医」という名称は、日本歯科専門医機構が認定するものに一本化されています。

Q. 認定医は何人くらいいるのですか?

A. 日本矯正歯科学会の名簿では認定医が3,384名、機構認定の専門医が297名、研修指導医が150名です。学会の正会員数は7,051名(2024年2月29日現在)ですので、専門医は正会員の約4%にあたります。

Q. ホームページに「認定医」と書いてあるのは問題ないのですか?

A. 厚生労働省が公表している広告可能な専門性資格のリストでは、歯科は5団体5資格のみで、日本矯正歯科学会は含まれていません。したがって学会の認定医は広告可能な専門性資格ではありません。矯正分野で広告できるのは、日本歯科専門医機構が認定する「矯正歯科専門医」のみで、その場合も認定団体名を明記する必要があります。

Q. 矯正歯科の専門医はいつから広告できるようになったのですか?

A. 2024年9月13日付の厚生労働省の改正からです。それ以前は、矯正歯科に広告可能な専門医資格は存在しませんでした。「矯正には広告できる専門医資格がない」という解説は、この改正前の情報です。

Q. 認定医や専門医を持っている歯科医師を自分で調べられますか?

A. できます。日本矯正歯科学会の名簿検索(jos.gr.jp/roster)では都道府県やキーワードで検索でき、日本歯科専門医機構のサイトでは機構認定専門医の年度別名簿がPDFで公開されています。保険適用の矯正ができる医療機関は、地方厚生(支)局の「施設基準届出受理医療機関名簿」で確認できます。

Q. 認定医や専門医なら治療がうまいということですか?

A. 資格は一定の研修と審査を経たことの担保であって、個々の治療結果を保証するものではありません。審査の対象は申請者が選んで提出した症例であり、日常診療全体の成績を測る仕組みではありません。また専門医の筆記試験の範囲は法令・医療安全・倫理的配慮などで、臨床技能を直接測るものではありません。認定医制度規則自体も「標準的な矯正歯科治療を提供する能力」と規定しています。

参考文献

  1. 公益社団法人日本矯正歯科学会「認定医・臨床指導医名簿一覧」(2026年8月現在). 日本矯正歯科学会
  2. 矯正歯科認定医制度規則(令和7年12月18日最終改正)/日本矯正歯科学会. PDF
  3. 矯正歯科専門医制度規則(令和8年3月5日最終改正)/日本矯正歯科学会. PDF
  4. 日本矯正歯科学会「学会のご紹介」(会員数). 日本矯正歯科学会
  5. 日本歯科専門医機構「専門医・研修施設一覧」. 日本歯科専門医機構
  6. 厚生労働省「医療に関する広告が可能となった医師等の専門性に関する資格名」(令和5年2月17日). PDF
  7. 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)」(令和8年3月30日最終改正). PDF
  8. 厚生労働省「新旧対照表」(医政発0913第4号、令和6年9月13日). PDF
  9. 森山啓司ほか「矯正歯科専門医制度の機構認定までの道程」日本歯科医学会連合雑誌 2024;3(1):1–6. J-STAGE
  10. 矯正歯科専門医制度施行細則(令和8年3月5日最終改正)/日本矯正歯科学会. PDF
  11. Sameshima GT, Sinclair PM. Predicting and preventing root resorption: Part II. Treatment factors. Am J Orthod Dentofacial Orthop. 2001;119(5):511–515. PubMed 11343023
  12. 日本矯正歯科学会「医療広告および表示に関する法令遵守について(お知らせ)」令和8年3月31日. PDF
  13. 消費者庁「医療法人社団スマイルスクエアに対する景品表示法に基づく措置命令について」令和7年3月18日公表. 消費者庁

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