インビザラインファーストの費用は、第1期・第2期のどこまでを含むかで変わります。自由診療の理由、総額を左右する項目、研究から見た限界と向かないケースを解説します。
「インビザラインファーストはいくらかかるのか」「第2期も必要と言われたら、結局総額はどうなるのか」。お子さんの矯正を考える保護者の方から、よく聞く悩みです。
先に結論をお伝えします。インビザラインファーストは保険が使えない自由診療で、費用は装置の価格だけでは決まりません。治療範囲を第1期で区切るか、第2期まで含めるか、途中で装置を追加するかで総額は変わります。比べるべきは第1期の金額ではなく、第2期に進んだ場合まで含めた総額の目安です。この記事では、総額を左右する要素と、費用が増えやすいケース、向かないケースを整理します。

目次
費用は「どこまでを治療範囲とするか」で決まる
インビザラインファーストの費用は、治療範囲の設定で見え方が大きく変わります。まず子どもの矯正の2段階の流れを押さえておきましょう。
- 第1期治療:乳歯と永久歯が混在する混合歯列期に行う治療です。歯列の幅や生え変わりのスペースを整えることが主な目的です。
- 第2期治療:永久歯が生えそろった後に、歯並びとかみ合わせを仕上げる治療です。大人の矯正に近い内容になります。
インビザラインファーストは、主に第1期治療で使うマウスピース型の矯正装置です。透明な薄いマウスピース(アライナー)を段階的に交換し、歯を少しずつ動かします。
第1期で治療を終えられるか、第2期が必要になるかは、開始時点では判断しきれないことが多いです。永久歯の生え方や顎の成長は、時間がたたないとわからない部分があるためです。
そのため「第1期の費用が安いか高いか」だけで判断すると、後で想定外の出費になることがあります。費用を考える出発点は、第2期に進んだ場合の金額と、その時点での扱いまで確認することです。
インビザラインファーストに保険は使えるか
インビザラインファーストには、原則として健康保険は使えません。矯正歯科治療は一般的に保険適用外とされているためです[1]。
保険で矯正治療ができるのは、次の3つの場合に限られます[1]。
- 厚生労働大臣が定める疾患が原因のかみ合わせの異常
- 前歯・小臼歯の永久歯のうち3本以上が生えてこないことによるかみ合わせの異常(埋伏歯開窓術が必要なものに限る)
- 顎変形症で、顎の骨を切る手術が必要な場合の手術前後の矯正治療
厚生労働大臣が定める疾患は、唇顎口蓋裂、ダウン症候群、6歯以上の先天性部分無歯症など66項目です[1]。また、保険で矯正治療ができるのは、施設基準を満たして届け出た指定医療機関に限られます[1]。
さらに、日本矯正歯科学会の治療指針では、アライナー治療は「保険診療には使用できない」と明記されています[2]。つまり保険の対象となる条件に当てはまる場合でも、マウスピース型装置での治療は自由診療になります。
お子さんに上記の疾患や、永久歯が生えてこない状態がある場合は、保険診療の対象かどうかを先に確認することをおすすめします。費用の前提そのものが変わる可能性があるためです。
総額を左右する6つの項目
自由診療の料金体系は医院ごとに異なります。総額をまとめて示す方式もあれば、通院ごとに費用がかかる方式もあります。見積もりの際は、次の項目がどこに含まれているかを確認すると比較しやすくなります。
- 精密検査・診断料:レントゲンや歯型の採取、治療計画の説明にかかる費用です。
- 第1期の装置料:インビザラインファーストのアライナー一式の費用です。
- 通院ごとの調整・観察料:経過確認のたびに費用がかかるかどうかです。
- 追加アライナーや他装置の費用:計画どおりに歯が動かない場合の作り直しや、別の装置を併用する場合の扱いです。
- 保定装置と経過観察の費用:保定装置は、動かした歯が元に戻る「後戻り」を防ぐための装置です。
- 第2期へ移行する場合の費用:第1期の費用が差し引かれるのか、別途かかるのかを確認します。
特に4と6は、契約時に見落とされやすい項目です。「追加が必要になった場合にいくらかかるか」を事前に聞いておくと、総額の幅がつかみやすくなります。
当院の具体的な料金は料金表のページでご案内しています。どの項目が含まれるかは、カウンセリングで個別にご説明します。

第2期まで含めた総額の考え方
総額を考えるときは、起こりうる進み方を複数想定しておくと安心です。代表的なパターンを費用の構造で比べると、次のようになります。
| 進み方 | 総額に含まれる主な項目 | 確認しておきたい点 |
|---|---|---|
| 第1期のみで終了し経過観察 | 検査・第1期装置・観察料・保定 | 経過観察の期間と、その間の通院費用の有無 |
| 第1期の途中で他装置を併用 | 上記+併用装置の費用 | 併用装置が料金に含まれるか、別料金か |
| 第1期→第2期をマウスピースで実施 | 上記+第2期の装置・調整・保定 | 第1期の費用を差し引く仕組みがあるか |
| 第1期→第2期をワイヤーで実施 | 上記+ワイヤー装置の費用 | 装置の種類を変える場合の費用の扱い |
第2期でどの装置を使うかは、永久歯が生えそろった時点の状態で判断します。マウスピースが合う場合もあれば、ワイヤー矯正のほうが適する場合もあります。
第1期で取り組むべき内容によっては、インビザラインファースト以外の装置から始める選択肢もあります。装置の組み合わせ方はプレオルソとインビザラインファーストの違いでも解説しています。
見積もりを受け取ったら、「第1期だけの金額」と「第2期まで進んだ場合の金額」を並べて確認してください。2つの数字の差が、将来の費用の幅の目安になります。
費用や期間が増えやすい要因:研究と指針から見た限界
追加の費用は、計画どおりに歯が動かない場合に生じやすくなります。インビザラインファーストには、研究で示された限界があります。
計画した拡大が、そのまま実現するとは限らない
混合歯列期のインビザラインファーストで、計画した歯列の拡大がどれだけ実現したかを調べた系統的レビューがあります[4]。9研究を対象に、実現量を計画量で割った割合を評価したものです[4]。
- 上顎の拡大の実現率は平均65%。部位別では第一大臼歯が58%と最も低く、乳犬歯が70%と最も高い結果でした[4]。
- 下顎は平均71%で、乳犬歯が75%と最も高い結果でした[4]。
- 計画した拡大量の大小と実現率の間に、有意な関連はありませんでした[4]。
著者らは、予測しやすさは「控えめ〜中程度」で、上顎の奥歯側には限界が残ると結論づけています[4]。部位によっては、多めに動かす設計(過矯正)や他の装置の併用が必要になる可能性も指摘されています[4]。なお、エビデンスの確実性は上顎が低、下顎が中等度とされています[4]。
費用の観点では、追加アライナーや併用装置が必要になる場合があると理解しておくことが大切です。
装着時間が足りないと、効果が変わる
アライナーの効果は装着時間に左右されます[2]。学会の見解でも、毎日長時間の装着が必要で、使い方によって効果が大きく異なることが欠点として挙げられています[3]。
子どもの場合、装着の管理は保護者の協力が前提になります。装着が続かないと計画とのずれが大きくなり、作り直しや装置の変更につながることがあります。
やり直しは期間も難易度も上がる
誤った歯の移動をした後にやり直す場合、治療期間が長くなり難易度も上がるとされています[3]。適切な診察・検査・診断や経過確認をせずにアライナーを直接配送する治療は、歯科医学的に非常に危険と注意喚起されています[3]。費用を抑えたい場合でも、検査と経過確認を省かないことが結果的に負担を減らします。
インビザラインファーストが向かないケースと他の選択肢
費用以前に、そもそも適しているかどうかの確認が欠かせません。学会の指針では、子どものアライナー治療に慎重な立場がとられています。
- 2017年の治療指針は、乳歯列期・混合歯列期で顎の成長や歯の生え方の正確な予測が難しい症例を、推奨されない症例に挙げています[2]。
- 骨格に原因があるかみ合わせのずれ(骨格性の不正)も、推奨されない症例とされています[2]。
- 2019年の学会見解(第一版)でも、小児や骨格性要因を含む症例には適さないことが欠点として挙げられています[3]。
- 患者の協力度が低い症例も推奨されないとされています[2]。
一方で、この指針は2017年発行で、インビザラインファーストという製品名は出てきません[2]。新しい技術やエビデンスに合わせて随時改訂するとされている点も、あわせて知っておく必要があります[2]。
前述のレビューでも、測った拡大量が歯の傾きによるものか、骨の広がりによるものかは区別できていません[4]。そのため、骨格の拡大に従来型の装置が必要な症例には使うべきでないとしています[4]。
受け口や顎の幅の不足など骨格の要素が大きい場合は、固定式の拡大装置やワイヤー矯正などを検討します。マウスピースには、目立ちにくい、取り外して食事や歯磨きがしやすい、金属アレルギーがあっても使えるといった利点があります[3]。ただし利点だけで選ばず、症状に合うかを優先することが大切です。
開始時期の目安についてはインビザラインファーストは何歳から?で詳しくまとめています。子どもの矯正全般は小児矯正のページをご覧ください。
当院での考え方
当院では、インビザラインファーストを使うかどうかを、精密検査とカウンセリングのうえで判断します。歯の生え方、顎の大きさ、かみ合わせ、骨格の要素を確認し、マウスピースが適さないと考える場合はその理由もお伝えします。
費用については、第1期のみで終わる場合と、第2期まで進む場合の両方を想定してご説明します。追加の装置が必要になった場合の扱いや、保定・経過観察の費用も、契約前に確認していただけるようにしています。
治療期間や結果には個人差があります。研究で示されているように、計画どおりに歯が動かない部位もあるため、途中で計画を見直す可能性も含めてご説明します。
お支払い方法についてはデンタルローンと医療費控除|矯正の支払い方法でまとめています。総額の考え方に不安がある段階でも、まずは相談の場で疑問を整理していただければと考えています。
よくある質問
Q. インビザラインファーストをすれば、第2期治療は不要になりますか?
第2期治療が必要になるかどうかは個人差があり、開始時点では判断しきれないことが多いです。永久歯の生え方や顎の成長を見ながら、経過の中で判断します。見積もりの際は、第2期に進んだ場合の費用もあわせて確認しておくと安心です。
Q. インビザラインファーストに健康保険は使えますか?
原則として使えません。矯正治療で保険が使えるのは、厚生労働大臣が定める疾患など限られた場合だけで、アライナー治療は保険診療には使用できないとされています。該当する可能性がある場合は、まず保険診療の対象かどうかをご確認ください。
Q. 見積もり後に追加費用がかかることはありますか?
計画どおりに歯が動かない場合や装着時間が足りない場合に、追加のアライナーや他の装置が必要になることがあります。その費用が料金に含まれるかどうかは医院によって異なります。契約前に、追加が必要になった場合の扱いを確認しておくことをおすすめします。
Q. 支払い方法や医療費控除について相談できますか?
当院ではお支払い方法についてカウンセリング時にご相談いただけます。医療費控除の対象になるかは条件によって変わるため、個別の可否は税務署などでのご確認をお願いしています。考え方の概要は当院サイトの関連ページで解説しています。
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参考文献
- 公益社団法人 日本矯正歯科学会「矯正歯科治療が保険診療の適用になる場合とは」2024(最終更新。初出2020)
- 公益社団法人 日本矯正歯科学会(マウスピース矯正歯科装置指針WG)「アライナー型矯正装置による治療指針」2017(平成29年2月27日発行)
- 公益社団法人 日本矯正歯科学会「公益社団法人 日本矯正歯科学会 ポジションステートメント マウスピース型矯正装置による治療に関する見解」2022(第二版、2022年7月15日。同じページに第一版2019年6月5日も掲載)
- The Angle Orthodontist(96巻4号 p.469、PMID 41833315、DOI 10.2319/072425-617.1)「Predictability of clear aligners in achieving planned dental arch expansion during mixed dentition: a systematic review and meta-analysis」2026
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。治療の適否・期間・費用には個人差があり、最終的な診断は歯科医師が精密検査のうえで行います。
治療にあたって必ずご確認ください
■ 自由診療(保険適用外)です
本記事で紹介している矯正治療・審美治療は、顎変形症など一部の例外を除き健康保険の適用外となる自由診療です。費用・治療期間・通院回数には個人差があり、精密検査のうえで治療計画とあわせて書面でご説明します。費用の目安は料金表をご確認ください。
■ 主なリスク・副作用
装置装着中の一時的な痛み・違和感・発音のしにくさ/むし歯・歯肉炎(清掃状態により)/歯根吸収・歯肉退縮が起こる可能性/治療計画の変更や追加の処置が必要になる場合があること/保定(リテーナー)を行わない場合の後戻り。審美治療では歯の切削・知覚過敏・補綴物の破損や脱離が起こる場合があります。これらが「起こらない」とお約束することはできません。
■ 未承認医療機器に関する情報
・未承認医薬品等であること:インビザラインで使用するマウスピース型矯正装置(アライナー)は、日本国内において医薬品医療機器等法上の承認を受けていない医療機器です。
・入手経路:当院で使用するアライナーは、アライン・テクノロジー社の国内製造拠点(横浜)で製造されたものを入手しています。医師による個人輸入ではありません。
・国内の承認医療機器の有無:当院が把握する範囲では、同一の性能を有する国内承認医療機器は確認されていません。
・諸外国における安全性等に係る情報:インビザライン・システムは米国FDAにおける市販前届出(510(k))を経て米国をはじめ各国で使用されています。重大な副作用の報告は確認されていませんが、諸外国の承認等は日本国内の安全性を保証するものではありません。
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